半分の心臓
カタワレ
重い心を置き去りに足取りは軽くなる。
 
実は、楽しみがあるんだ。
 
一番の楽しみは、
いつでも道中の後半にあるもんで、
それがボクの歪んだ姿勢を正しくさせていた。
 
通学路の中間地点には
大きな駅があって、
そこから佐智乃の通学路と合流する。
 
実は、佐智乃が通う霞ヶ丘高校は煙星のすぐ隣。
 
佐智乃は駅で乗換えをするため、バスを待つ。

そのバス停の近くを通るたびに

佐智乃に会えないかと期待し胸を躍らせているのだ。
 
佐智乃に逢えるかどうかは分からない。
 
でも、可能性は高いほうがいい。
そんなセコイ思考。
 
恋する男心はそんなもんだ。
 
 
自転車で駅前を通るたびに心が弾み、正直、自分が負け犬であることなんてすっかり忘れてしまう。
 
どきどき、どきどき、
心臓がドラムを叩くように軽快なリズムと心地よさを提供していた。
 
 
一人でいるくせに顔がにやける。

 

今度は
笑顔を隠すため、
カバンのポケットに入れてあるティッシュが大活躍。
結局、鼻が痛いのは変わらない。

それなのに悦にいっているのだからボクはMなのかもしれない。
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