半分の心臓
声を聞くだけで合否くらい理解できる。
素直におめでとうを言いたかったんだ。
 
「え?ありがと。あきと君は?」
 
「ボクはダメだったけど気にしなくていいよ。おめでとう。」
 
口から出たのは多分このときの本心。
今のボクらは、社会とか見栄とかそんなものは関係ない2人の世界にいる。
その世界の太陽は佐智乃で、ボクにはその世界はまぶしすぎる。
ボクはせいぜい太陽の光を借りて輝く月でしかない。
太陽は月を気にしちゃいけないんだ。
月を気にして光を抑えてしまったら、月も輝けなくなる。
  
「・・・・。」
 
受話器の機会音が沈黙をより深くさせる。

 

「・・・そっか。」
 

明らかにトーンダウン。
少しだけ、悪いことしたなって感じてしまう。
せっかく喜んでいたのに。
顔は見えないのに眉をひそめた佐智乃の姿が目に浮かんだ。
ゴメンな。ゴメンな。心の中で何度も佐智乃に謝った。
 
「そういえば珍しいね。電話してくるなんて。」
 
話題を変えるための苦し紛れ。
 
「うん。遊びに行ってもいいかなって思って」
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