半分の心臓
しばらくすると
ようやくもう一人、住人が動きだす。
 
朝の父親はゾウガメのように
動く神聖な存在だ。
 
進行方向を邪魔したら悪い。
 
「お前、よく朝からそんなに喰えるな?」
 
コレは我が父流の「おはよう」だ。
 
どうやらボクは
この家の住人からするとずれているらしい。
 
1人は牛乳愛好家。
 
両親はパン愛妻家。
 
それに比べると朝食が夕食よりも多く、昨日の残り物まで処理しているボクは確かに変だ。
 
でも、ごみ処理は環境に必要だ。
 
「朝だけで箱半分飲み干してるヤツの方が変だろ?」
 
と牛乳愛好家を出汁に反論し父との朝の挨拶、終了。
  
そんな挨拶にはお構いなしで
勝手にリモコンでチャンネルをNHKに変えている父。
 
「見てないだろ?」
 
おもいっきりテレビ画面に
釘付けになっている人間に向かって
言うセリフなのだろうか?


「・・・。」
 
右手の湯飲みに力が入る。
所詮「はい」としか言えないか弱き男ですよ。
ボクは。
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