墜ちた羽根
母さんの望みだったなんて信じられない。
何で生かしてやらなかったんだろう?
ナイフを持つ手が震える。思わず奴の腕を刺していた。
なのにあいつは苦痛に歪む事もなく。

「嘘だ…そんなの、嘘だ」
「お前が来なくても、今日死のうと思っていた。
月が綺麗な内に、母さんが死んだ毒で」

そう言って、片手で傍に置いてあったワインの入ったコップを手に取った。
あれはもしかして毒なのか…?

「やめろっ…もっと生きろ」
「もう命が短くなっているんだ。だから早く楽にさせてくれ」

そう言ってワインを奴は飲み干した。瞬間、血を吐いて奴は倒れた。

「逃げろ…お前の羽根なら…逃げ切れる……」
「どうせお前を殺したら死ぬ運命なんだ…勝手に死ぬなクソ親父」
「オウヤ…」

“愛しているよ”
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