墜ちた羽根
何も聞こえなくなった。
俺はショックを受けた。防げた筈なのに、防げなかった。
俺はこの男を殺していない。だけど見殺しにした。
逃げても俺は殺人者には変わりない。
だから死ぬ事にも変わりないと言う事だ。
色々と頭が混乱して、その場に倒れてしまった。
次に目が覚めた時、俺は牢の中の小さなベッドの上だった。

「確かに罪人は血の付いたナイフを握っていたのだね?」
「間違いありません。私が見間違えるはずがありません。」

始まった裁判。俺はあっさりと奴を殺した事を認めた。
どうせ死ぬ覚悟は出来ていたし、
幾ら言い訳しても更に疑われるだけだから。
何も聞こえないフリをした。
人殺しだとか、ブラッドウィングだの。もう聞き慣れた言葉。
聞こえる言葉に何も感じなかった。
< 101 / 117 >

この作品をシェア

pagetop