墜ちた羽根
7.倖、来訪
信じられない話だった。
オウヤ君が人殺しで、王子様だった事が。
あんなに口も性格も悪いのに。
ただただ堪えていた涙を流す事しか出来なかった。

たった3日間でも、一緒にいて楽しかった。
ここで初めて自分がオウヤ君を好きになっている事に気付いた。
今更手遅れ。そんな事は分かっている。
それに私にはハルヤ君という勝手に決められた婚約者もいる。

「分かったでしょ?オウヤは血も涙もない奴だって」
「嘘でしょ…?父親を殺しただなんて。彼にあんな事…」
「出来ないとでも言いたい訳?そう言える根拠はあるの?」

また冷たい口調でハルヤ君はそう言った。
根拠は確かにない。でも……でも……!


「全部嘘だって言ってよ…」
「うん。全部嘘とは言えないけどね」

…“うん”?こんな状況で何でそんな事を。
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