墜ちた羽根
「オウヤ君、おやすみ。
おばあちゃんが怪我が治るまでゆっくりして行って良いって」
「寝たら明日は戦場だけどな」
「ちゃんと守ってよ?護衛さん」

今日交わした最後の会話は、
あまりにも現実離れをしているような気がした。
部屋から出て、戸を閉めた。
明日なんか来なければ良いとずっと心の中で願った。
明日が来なければ私はオウヤ君に守ってもらわなくて済むし、
オウヤ君も私を守らずに済む。だけどそれでも明日はやってくる。
だから今、オウヤ君が言った言葉が全て夢であって欲しいと願った。
怪我をして熱を出したオウヤ君がゆっくり休められるし、
私も何時もと変わりのない生活が出来る。

何故あの羽根を拾ってしまったのだろう。
青みがかっている羽根なのならば、
きっと幸せを運んでくれると思ったのに。
不幸ばかりだ。運ばれてきたのは、
血だらけのオウヤ君と名前も容姿も知らない婚約者の存在の知らせ。
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