墜ちた羽根
5.桜、春、涼
助けようとして、やめた。どうせもうこれで終わり。
諦めよう。人生もこれで終わった。
それでもハルヤの約束破りが納得出来なくて、城に戻ることにした。
全身が痛むし、傷は開いて血は沢山流れるし、
ふらふらする。それでも何とか持ち応えた。

「ゲームオーバー、これで御終いだね」

戻って来れば、ハルヤは何時もと変わらぬ笑顔で出迎えてくれた。
約束が違うと言えば、
多分と付け加えたじゃないとまた笑って返された。
怒りが沸沸と込み上げる中で、
ハルヤは信じられない事を口にした。

「君さ、本当は父さんを殺していないんじゃない?」

何を根拠に。俺は殺した。見殺しにしたんだ。
否定をしようとした瞬間に視界が歪んだ。
紅い色と、真っ黒な色。それだけが鮮やかだった。
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