-astral-星に捧ぐ少女
「いい加減にしたら?
お前達、煩いよ。フィリアさんが起きちゃうだろ?」
滅多に怒りを見せないカースが冷たい瞳でダンテとユーシスを一喝する。
「部屋でぎゃあぎゃあ喚くなら出て行け。話が全く進まねぇ。ユーシス、お前も少し頭を冷やせ。お前の悪い癖だぞ。今自分が何をするべきなのかを考えろ」
「…はい……」
ジードの一言にユーシスは頷き、ダンテはケッとそっぽを向いてしまった。
「で、だ。エイゼ、この嬢ちゃんは一体何に狙われてやがんだ?嬢ちゃんの事は謎だらけだからな」
「…特別な力は誰からも羨まれるが虐げられもする。その力を欲しがる者、その力を恐れる者…さまざまにね……」
エイゼは悲しげにフィリアの青白い顔を見つめた。
「彼女にはきっと…死ぬまで安息は訪れない。いや…死を選べずに何度も苦しみ続ける…まるで生き地獄だね…」
エイゼはフィリアの未来であり過去を思い出す。
何度も…自分の愛した世界を守る為に修羅の道を進むフィリアを哀れであり、美しいと思っていた。
「…私から君達に言えるのは、彼女はずっと孤独だったという事だよ」
あえてあの未来と過去の話はしなかった。
それを彼女は望まないからだ。
「ある少女の孤独な物語を…君達に話そう……。
そう…これは…ある塔に捕われた特別な少女の物語だ……」
エイゼの話に全員が耳を傾ける。
こうしてフィリアの昔話が始まった。