-astral-星に捧ぐ少女


「何でお前は力を受け入れた?」


男の問いに俺は黙り込む。


俺は…力を望んだ。
もう奪われない為に…


大切なモノを守る為に…


「こんなはずじゃなかったんだ!!ただっ…俺は…」



わけが分からず涙が出てくる。


自分の中に在る未知なる力への恐怖と迷い…
その二つが葛藤している。

「…もう失いたくなくて…大切なモノを守る為の力が欲しかった…」


だから力を望んだ。


「立派なもんだ!
ガキがいっちょ前に…。どうだ、俺と一緒に来ないか?」


「…は…?」


こんな時に何言って……


「俺はクロード教団の騎士団を束ねてる。その力、俺の元で育ててみないか?」


男はガハハと笑い、俺に手を差し延べる。


「…俺は…お前達クロード教団も、アデリア教団も許せない」



故郷を焼け野原にされたんだ…
許せるはずがない。


「お前を信用するなんて出来るわけが無い!!
今の俺には、何が正しくて、何が間違いなんて決められねぇし、どちらが正しいかなんて分かんねぇんだ!!」



怒鳴る俺に男は真剣な瞳を向けた。


「…なら見極めろ」

「え…?」


見極める……?


「己の目で見て、聞いて…。何が己の進む道かを見極めればいい。こちら側につくのはその為に利用したんだと思っていればいい」


俺の…目で見て…
俺の耳で感じる………


「世界を知れ、ガキ。
それから進む道を決めればいい」



青髪を風に靡かせた男が俺は美しいと思った。


この男は信じられる。
いや…まだ完全にとは言わないけれど、少なくとも今は…


「…俺を…連れてってくれ」


生まれ育った故郷を離れても、俺は世界を知ろう。


そしてこの世界で己の進む道を探す。


「今の俺に出来るのはこれだけだから…」


そう言った俺を男は満足そうに見つめたのだった。









< 130 / 357 >

この作品をシェア

pagetop