-astral-星に捧ぐ少女
「美しい娘よ。娘の命は無事なんだろうな?」
「はい、氷は表面の壁のようなもの。中は酸素濃度の高いぬるま湯になっております」
ヒユキは淡々と答える。
「アイリス」
長は氷漬けにされたフィリアを見上げたまま名前を呼ぶ。
「…はい……」
アイリスはフィリアの前へと立つ。
「…心狂のアストラル」
―ビクッと氷の中で眠るフィリアの体が震える。
「私に従い、力を発動させなさい」
その瞬間―…
―ピカッとフィリアの体が光った。
「心の支配は成功です」
アイリスの言葉に長は満足そうに頷く。
「お前には感謝しておるぞ。クロード教団の内情を探るのに入っていたのがお前で良かった」
「…ありがたき幸せ」
苦痛を滲ませた顔でアイリスは頭を下げた。
「…さぁ…そろそろクロードの犬共が来るころだな。手厚くもてなしてやろう」
長は口端を釣り合げ、不気味に笑った。