-astral-星に捧ぐ少女


「美しい娘よ。娘の命は無事なんだろうな?」

「はい、氷は表面の壁のようなもの。中は酸素濃度の高いぬるま湯になっております」


ヒユキは淡々と答える。


「アイリス」


長は氷漬けにされたフィリアを見上げたまま名前を呼ぶ。


「…はい……」


アイリスはフィリアの前へと立つ。


「…心狂のアストラル」


―ビクッと氷の中で眠るフィリアの体が震える。


「私に従い、力を発動させなさい」


その瞬間―…


―ピカッとフィリアの体が光った。


「心の支配は成功です」


アイリスの言葉に長は満足そうに頷く。


「お前には感謝しておるぞ。クロード教団の内情を探るのに入っていたのがお前で良かった」


「…ありがたき幸せ」


苦痛を滲ませた顔でアイリスは頭を下げた。


「…さぁ…そろそろクロードの犬共が来るころだな。手厚くもてなしてやろう」


長は口端を釣り合げ、不気味に笑った。













< 157 / 357 >

この作品をシェア

pagetop