-astral-星に捧ぐ少女


「わらわは…自分の意志で時を見る。代償として永久の眠りが待っていようと、わらわの代償はわらわが払う」


「!!!」


アイリスは目を見開いた。


「おぬしがわらわの礎となっても、わらわは嬉しくはない!!」


その翡翠の瞳がアイリスを見据える。


アストラルの代償…
大きすぎる力ほど大きな代償を払う事になる。


「もうこれ以上…あなたに力を使わせたくなかった。私は…あの大陸であなたと穏やかな時間を生きたい!!だから……」


ヨシヒラにこの女性の解放を持ち掛けたのだろう。


アイリスはこの女性を救いたかったのだ。


「アイリス…わらわは幸せだ。お前のような妹を持てて…」


女性は両手を広げた。


「帰ってくるのだ、アイリス」

「っ…はいっ……」


アイリスがかけだそうとしたその時ー…


「襲雷のアストラル」


ヨシヒラの酷く冷酷な一言が聞こえた。


―ズシャッ


それから…耳を塞ぎたくなるような肉の裂ける音。


「ぁ…巫女…さ………」


アイリスは女性へと手を伸ばす。


「アイリス!!!」


女性は声を震わせ駆け寄る。


それがスローモーションに見えた。


アイリスが雷に貫かた。
その胸から血を流し、瞳から涙を流し……



「お前ももう用無しだ」


ヨシヒラの低い声が聞こえたと同時に俺は駆け出す。


アイリスが守ろうとしたこの人を守らなくてはいけない、そう思ったら体が勝手に動いた。


「襲雷のアストラル」


―ズドーン!!!!


雷が俺達を襲う。


「くっ!!!」


俺は願うように女性の体を抱きしめ雷を避ける。


な…なんとか避けきった…間一髪だったな……


「アイリス…すまない…」

女性は俯いた。
振り返ればすでに息絶えたアイリスの姿がある。


「くそっ…アイリス…」


助けられなかった…
助けられなかった!!!


その場にいた全員が言葉を失う。



「長…アイリスをどうして…」


「アイリスは死んだ…のか…!?」


口々に動揺を言葉にする彼等を気にする事なくヨシヒラはフィリアの元へと歩いて行く。


「止めろ!!フィリアに何をする気だ!!」


思わず走り出した俺の前に雷が立ちはだかる。


くそ!!!
雷が邪魔で前に進めない。


ヨシヒラは氷に手を添えた。










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