-astral-星に捧ぐ少女
やっと見つけた宿屋の前で私達は立ち止まる。
「宿とれたし、ゆっくりしようか。フィリアさん」
こっちこっちとカースさんが私を手招きする。
素直に近づくと、カースさんが顔を近付けてきた。
「な、カース!!!」
「変態野郎…」
ユーシスとダンテの言葉をまるっきり無視をして、カースさんは私の額に自分の額をくっつけた。
「…熱があるね?体も怠かったろうに…無理していたでしょ?」
カースさんは少し咎めるように言う。
お兄さん…とはカースさんのような人を言うのですね。
一瞬、ロイ兄さんの姿が頭を過ぎる。
ロイ兄さん………
ロイ兄さんは今頃どうしているのでしょうか…
ぼんやりとそんな事を考えていると、カースさんは困ったように笑う。
「君に見つめられるのは願ったり叶ったりだけど、今はゆっくり休んだ方がよさそうだね」
「…ぁ………」
カースさんは私の体調が悪いと気づいてたんですね。
「やっぱり無理してたのか!?すぐに休め!!」
ユーシスは慌てたように私の背中を押す。
「ユ、ユーシス…自分で歩けますから…」
「だ、だけどよ…」
そんなユーシスの肩をダンテがガシッと掴んだ。
「馬鹿野郎、ふらついてる人間をドンドン押す馬鹿がどこにいる!?…あ、ここにいたか」
「馬鹿馬鹿言うな!!つか、その台詞前にも聞いた事あるような…」
「気のせいか?」とユーシスが首を傾げている隙にダンテが私の体を横抱きにする。
「わっ…ダ、ダンテ…?」
「じっとしてろ!!多分、力の使いすぎが原因だろ。自分の意志関係なく力を使ってんだ、体に負荷がかからないわけねぇ」
ダンテの声はいつもより優しい気がした。
初めは…この人に抱く感情が恐怖だけだったのですが…
今は何故か……
とても心強く思います……