-astral-星に捧ぐ少女
「貴様…よくもまぁ俺の前に顔出せたなぁ…シド!!」
外へと出る扉を前にも、ダンテの叫び声が聞こえる。
その殺気を込めた声に私は立ち止まる。
ダンテ…とても怒っている…みたいです……
「声だけで俺の事が分かるとは…光栄な事だ」
男はローブを脱ぎ捨て、顔をダンテへと晒す。
灰色の瞳に灰色の髪をもつその男性は青年と呼ぶには若すぎるが、とても美しい男性だった。
「…ハイベルト、お前が俺の事を覚えてるなんてな」
声からして男性だろう男が、ニヤリと笑う。
「…忘れるわけねぇだろう?てめぇの顔は国王の次に覚えてるぜ…」
憎しみを込めた瞳でシドと呼ばれた男性を睨む。
「シド!!!今、俺の前に姿を晒した事…後悔させてやる!!!」
―シュッ
ダンテの攻撃は空を斬る。「チッ」とダンテは舌打ちをした。
「ハイベルト、剣を捨てたのか?」
シドは剣を構え、ダンテを見つめる。
「ハッ!!俺はもう騎士じゃねぇんだよ!!!」
―シュッ
―ガキンッ
手甲掻きを振るうダンテだが、攻撃は空を斬るか、シドに受け止められるかのどちらかだ。
「ハイベルト…剣では独眼竜…隻眼の英雄とまで謳われたダンテ・ハイベルトが…その武器では灰になった英雄だな」
馬鹿にしたように笑うシドにダンテはさらに殺気を放つ。
ダンテ……
一体あなたに何があったのですか……?
「テレサを殺されたのがそんなに憎いか?」
シドがそう口にした瞬間、ダンテは目の色を変えた。
「…貴様……」
「どうやら地雷を踏んだようだな…」
特に気にした様子もないシドにダンテは斬りかかる。
―ザシュッ
ダンテの手甲掻きがシドの腕を斬りつける。
「…ほう……まだ使えそうだな」
「な…んだと……?」
ダンテは怪訝そうにシドを睨みつける。
「ハイベルト、アデルシア帝国に戻れ」
「…馬鹿言うんじゃねぇよ…どういうつもりだ?」
「どうもこうも…国王の勅命だ。戻れハイベルト」
有無を言わせない威圧感でダンテを見据える。
「ふざけるな…」
「テレサの事は仕方なかった。国王は気まぐれだからな」
その無慈悲な声に、ダンテの怒りが募るのが分かる。
アデルシア帝国……
国王…
シド、テレサという人……
ダンテは一体………