-astral-星に捧ぐ少女
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戦から戻り、すぐに俺は城へと呼ばれた。
そのまま王の間に通され、俺の前にラドナ国王が現れた。
「…ダンテ・ハイベルト、只今戻りました」
片膝を床につけ、頭を下げる。
呼ばれた理由は何となく分かっていた。
テレサの事か………
今日は城に上がる日だったな…
「ハイベルト、お前に告げなければならない事がある。まずは顔を上げてくれ」
国王の言葉通り顔を上げると、髪と揃いの漆黒の瞳が俺に向けられた。
その威圧感にゴクリと唾を飲む。
「お前の妹、テレサ…と言ったか…?」
「…………?」
と言ったかって……
自分の花嫁の名前すらちゃんと覚えてねぇのか?
苛立つ自分を抑えつつ俺は「はい」と答える。
国王は「そうか」とニタリと笑った。
「お前の妹は今日死んだ」
「…………は?」
突然告げられた言葉に俺は聞き返す。
今…何て言いやがったんだ?
「俺は、お前の妹の力を気に入って傍に置こうと思ったんだがな、力を使えと言っても頑なに首を振るばかりでな」
「何を…言って……」
力…テレサの力の事をどうして……
死んだって…何が…だ…?
「まさかお前の妹が失われた五星、ロストアストラルの使い手とはな」
「…何が言いたい?」
「ロストアストラルはな、5つに別れた大地が一つだった頃、光闇の五族メティアの長達が授かった審判の力の一つだ」
テレサの力……
それが…何だっていうんだ…
「俺が聞きたいのはそんな事じゃねぇ!!テレサをどうしたって聞いてんだ!!」
国王だかなんだか知らねぇが、アイツの事となったら話は別だ。
「先程も言わなかったか?死んだんだよ」
「…冗談言ってんじゃねぇよ!!!アイツをどうした!!」
俺は腰から剣を抜き、国王へと向ける。
「…頭が悪いのか?死んだんだ、ほら」
―カラン
俺のまえにあのルビーの指輪が転がった。
それは血に濡れている。
「嘘…だろ………?」
アイツが死んだ…?
アイツが………
『お兄様!!』
いつも笑顔で抱き着いてくるアイツが……
とてつもない怒りと悲しみが心を支配する。
テレサ!!!
―ゴワッ
自分のアストラルが感情に反応して発動する。
「…フッ…流石は独眼竜、隻眼の英雄か……。お前を失うのは痛いが…仕方ないか」
―パチンッ
ラドナ国王が指を鳴らすと、ゾロゾロと兵達が俺を囲んだ。
「…ラドナ国王…お前の息の根、俺が止めてやる」
「それはさせない」
聞き覚えのある声がする。振り返ると、シド隊長がいた。
「死にたくなければ剣をしまえ、ハイベルト」
シドは俺の前まで来ると、剣を向けた。