-astral-星に捧ぐ少女


「…そうですね…。捕われていたとはいえ私もアデルシアの民。同じ国の人間が沢山殺されて…もうこれ以上見てるだけではいられません」


テレサはこの国で生まれてこの国の王を愛した。


利用され捕われて…
それでもアデルシア帝国はテレサの故郷。


「テレサ…お前をやっと見つけたってのに…」


ダンテ……
ダンテはまた失うんだ。
一度失ったと思っていた妹を…


「お兄様…私の事を救ってくれてありがとうございます。本当に…お兄様の妹で良かったっ…」


テレサは涙を流しながらダンテに抱き着いた。


「一生忘れません。私はダンテ・ハイベルトのたった一人の妹です」


ダンテはテレサの頭を優しく撫でた。


「…っ…この兄不幸者が…」

「ふふっ…お兄様、幸せになってくださいね…」



この笑顔が、テレサの孝行なのかもしれない。
テレサは涙を流しながらずっと笑みを絶やさなかった。


兄の瞳に映る最後の自分が、笑顔でありますようにと…




「僕…も……」


シエルナは苦しそうに顔を歪めながら立ち上がる。


「シエルナ、大丈夫かい?」


カースがシエルナの体を支えた。


「ありがとうカース。だいぶ楽になった」


シエルナは小さく笑うと、また真剣な顔に戻した。


「僕も、今は罪を購う為じゃない。僕を僕として見てくれた大切な人を守る為にこの命を差し出すよ」


そう言ってシエルナはカースを見つめた。


「シエルナ…死ぬなんて…」

「カース、ありがとな。僕は初めて、自分を許せた気がするよ…」


反魂の巫女として、魂奪の巫女として苦しんできたシエルナ。


シエルナにとって生きる事は罪を重ねていくのと同じだったのかもしれない。


それでも…
シエルナは最期に見つけた。


自分の罪が許された居場所を…








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