-astral-星に捧ぐ少女
「私は、まだこの世界に未練があるよ」
エイゼ様は困ったように笑った。
「…後継者の事か」
ジード隊長の言葉にエイゼ様は頷く。
「まだ現役続けるつもりだったんだけどね、なかなか候補が見つからなくてね」
一国の主として君臨するエイゼ様には残された国と民を守る使命がある。
その継承すらゆっくりとしている時間も無い。
「やり残した事が沢山ある。ジード、それを君に押し付けるとするよ」
「そりゃないぜ。まぁ、仕方ねぇ、後継者でもなんでも見つけてやらぁ」
ジード隊長は屈託の無い笑みを浮かべる。
「ジード、君の人を見極める目を信じてる。立派でなくていい、取り柄がなくてもいい。ただ、王に相応しい器を持つ人間を探してくれ」
「教皇でなくて王か?」
「力によって崇められ、頂点に立つ支配者の時代は終わりだ。次は人の力ではい上がり、民に認められる王の時代にするんだ」
エイゼ様の瞳にはまるで何かを見通したように未来の聖クロード教団の姿が見えているのだろう。
「それは先見か?」
「違うよ、私の目指す未来だ」
その言葉に満足したようにジード隊長は頷いた。
「ならお前が初代王だ。俺はエイゼ、お前に永久の誓いを立てよう」
ジード隊長は方膝を地につけ、頭を垂れた。
そのまま剣を差し出す。
「確と、受け取ろう。その剣、我が信念の元に振るえ」
エイゼ様はそっとその剣に触れた。
「エイゼ、お前は最初で最後の主だ」
その言葉にエイゼ様は笑みを浮かべた。
「あぁ、ジード、君は私の最初で最後の剣だよ。これからも頼んだ」
エイゼ様はこれからもと言った。
エイゼ様の信念がこの先もずっと生きつづけるから…