愛をささやけるのならば
「ペギー。私の名前、教えて」

「自分の名前を知ったら、すべてを思い出す。すごく辛いこともね」

それでもいい。

たとえ辛いことでも、忘れたままよりはいい。

そう思い、私は力強くうなずいた。


「じゃあ、言うわよ」

「うん」

もったいぶらないで。

早く聞きたい。私の名前。


「あなたの名前は、真辺美穂」


マナベミホ。

あぁ。

思い出した。

私のお気に入りの名前。

真辺美穂。

完全に思い出したとたん、頭が割れるように痛くなった。

そして次の瞬間、私はしゃがみこむようにして意識を失った。
< 3 / 13 >

この作品をシェア

pagetop