残存リズム

ある日、紫音くんはお友達との約束のためにいつもより早い時間に切り上げた。

仕方がないので私も立ち上がり、紫音くんが荷物を片すのを待つ。


ギターを丁寧にケースに戻しながら紫音くんが言う。


「次は日曜だからな!」


もう、私が来るって決めつけてるし。

まぁ、来るけどさ。


私と紫音くんは、すごく仲良くなったと思う。

だけど、それだけだ。

紫音くんについて知っていることなんて、ほとんどないし。
私自身のことだってそれほど話してない。


仲良くなったとはいっても、所詮は歌い手と聞き手。私は彼のオーディエンスでしかない。



別に何を望んでる訳でもないけど、なんだか寂しい感じがする…。
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