残存リズム
紫音くんは、私の手に何かを握らせた。
緩やかに微笑む紫音くんの顔をうかがいながら、ゆっくりと掌を開く。
紫音くんの、ピック。
「それ、将来価値出るから!」
そう言っていたずらっぽく笑う紫音くん。
「凜は俺のファン第一号だからな!!」
紫音くんが、あの素敵な歌を奏でたピック。
私もいつか、私の音を奏でられるかな?
少し強くなれる気がして、私はピックを握りしめた。
紫音くんが続ける。
「なぁ、凜。俺は必ず有名になって、たくさんの人に俺の声を届けるよ。」
紫音くんと目を合わし、微笑む。
「だから凜も、次に会う時までに夢を見付けてて欲しいんだ!!」
私は、ゆっくりと、だけど強く頷いた。