残存リズム
「時間だ……。」
紫音くんが乗る電車の時刻が、すぐそこまで迫る。
荷物とギターケースを大切そうに持ち上げる紫音くん。
改札を出ていく紫音くんの、強い背中。
行ってしまう。
その前に伝えておくこと、あるでしょ?
私は、紫音くんの歌が……
ううん、紫音くんが……!
「…紫音くん!」
振り向く紫音くんの優しい笑顔。
泣くな、自分。
笑え。
「私には、紫音くんの歌が染み込んでる! 私の、一部なの!!」
一気に叫んで、息が切れる。
紫音くんは、温かく頷いた。
「私、頑張るね!!」
全開の笑顔で手を振る私。
そしてそれに全開の笑顔で返す紫音くん。