フルーツ ドロップス
放課後。
下敷きをうちわ代わりに扇いで2-Bに向かおうと、鞄を持った瞬間。
「おい。」
思いもよらないところから、声がして驚いて振り向く。
隣のレオン君はジッと俺を見ていた。
「……何ですか。」
「…今日、お前がこのクラスで一番人気者だって、聞いた。」
……え。
「…何かの聞き間違いじゃ…」
「俺に限ってそんなことはない。お前は人気者なんだろう?」
……こういう質問に対して、
『はい。人気者ですけど、何か。』
と答える人はまず居ないだろう。
「何故答えないのだ。人気者なのだから認めればいいだけだろう?」
いや、認めるって……
「……俺は人気者じゃ、ない、ですし。」
「何!?そんなはずはない!!」
ズイッと近寄ると、ジッと顔を見つめる。
「女子たちが言っていたのだ。‘唐沢 千空はかっこよい‘と。」
「……だ、からそれは……」
そう答えたとき、
「千空。帰るよ。」
「千空クーン。帰ろーよ。」
「!?!?な、何だと!?!?同じ顔が、み、三つ!?!?」
千弘と千夏がやってきた。
レオン君はびっくりしたのか、後ずさる。
「お、お前は、ドッペルゲンガーか!?!?」
そんなレオン君の声が、
学校中に響いた。
「「「ンなわけないでしょ。」」」
三人で突っ込むと、彼は冷静さを取り戻したのか、
「ふ、フンっ…初めからわかっていたさ!」
そう言うとプイッとそっぽを向いた。