フルーツ ドロップス
朝から焦げた目玉焼きを食べ、俺たちは家を出た。
外は綺麗に晴れていて、とても暖かい。
俺たちの家は長い坂道の上にあって、近くには桜の木がある。
「満開だな。」
ふいに千弘が呟いた。
「そだね。千弘は桜、好きだったの?」
「…別に、好きとかない、けど。」
千弘はそう言うと鞄を肩にかけた。
俺は満開に咲く桜を見上げた。
ひらひらと舞う桜の花びら。
「遅刻。急ぐよ。」
俺がそう言うと、「ん。」「そだね。行こっか。」
と二人は言った。
長い下り坂を三人で歩く。
私立阪上高校に通う俺たちはいつもこの坂道を下って
学校に向かっている。
「兄弟。」
ふいに、千弘が口を開いた。
「どうしたの。」
「目玉焼き、今度からは作らないように頼もう。」
「え、千弘くん、何も言わずに食べてたけど…不味かったの?」
「不味いって言うか、食べた気がしないというか…。」
千弘が顔を歪ませながら千夏の質問に答えていると、
「よぅ。三兄弟。」
後ろから聞きなれた声がした。