フルーツ ドロップス
「理。おはよう。」
俺がそう言うと、「元気がねぇな。いつもの通り。」
と文句を言われた。
コイツは鈴木 理。俺たちと同じ学園に通う高2だ。
生徒会長、学年首席と、好成績を残している
俺たちの幼馴染。
黒髪眼鏡で、堅物に見えるのが…
「タマに傷、だな。」
「あ?玉に傷って俺のこと言ってんのか?」
「別に、言ってないし。」
そう千弘が言うと、「元気ねぇな、お前も。」
と千弘も文句を言われた。
「おーはー。理君。」
「…千夏も棒読みでそう言われてもなぁ…」
…いつまで文句を言うつもりなんだろうか。
そう思っていると、
「おはようございます~。みなさん~。」
癒されるような甘ったるい声がした。
俺たちが一斉に振り返ると、声の主は息を切らしながら
こっちに向かって走ってきているのが見えた。
「桃、また寝坊したの。」
「…は~…間に合いましたぁ~。…寝坊はしてないですよ?
睡魔に襲われただけですから~。アハハ~」
「それを世間では‘寝坊‘って言うんじゃボケ!!」
理の過激なツッコミに、アハハ~と相変わらずな笑いをこぼす桃。
コイツは高橋 桃。同じ学園の俺たちの一年後輩。
名前からして可愛らしいのだが、家はこの辺じゃ有名な極道だ。
背も小さく、極道にはほど遠い容姿なのだが、
こぞって弟子入りを申し込む生徒も少なくない。なぜだ。
運動神経が抜群で、剣道と柔道が得意らしい。
この5人がいつものメンバー。
学年の違う桃は最近入ってきたばかりだが、
いつも一緒にいるのはこの5人。
全然話さない千弘。無表情の千夏。
桃に突っ込む理。笑ってる桃。
そして、それをただ見てる俺。
咲き誇る桜を見ながら、
…華がないな、とつくづく思う。