フルーツ ドロップス
学校に着くと、いつも通り校門の前は賑やかだった。
挨拶運動だったり、部活の勧誘だったり、
朝練のランニングだったり。
「あ、おはよう御座います。」
にこっと笑いながら挨拶してきたのは、
工藤先生だった。
工藤 恭一郎。
学園では男女関係なく人気の先生だ。
まだ25歳だし、若くてかっこいいから
女生徒からの人気はハンパない。
「おはよう御座います、工藤先生。」
理が行儀よくお辞儀したのを合図に、
「おはよー御座います。センセ。」
「おはよう……ございます。」
「おはようございます。」
と、桃、千弘、千夏が挨拶をした。
「皆仲が良くていいね。僕も、
高校の頃はこんな感じだったよ。アハハハ…」
「え~?そんな感じに見えないですよ~?」
「…まぁ、僕はどちらかと言うと、
桃君みたいな賑やかタイプっていうよりも
千空君みたいな静かな感じだったからね。」
「……俺?」
「うん。静かに、何か考えてる感じの。」
笑ってそう言う工藤先生。
…何か、考えてる感じ、か。
「…そんなふうに見えてるんですか。俺。」
「え!?あ、悪い意味じゃなくてね?いい意味で…」
「別に怒ってませんよ。」
「え、ぁ、…そっか。」
「千空君、無表情で言うから恐いよね。先生。」
「アハハ……そんなことないよ。」
千夏も同じ顔のくせに。無表情の顔で言われても
説得力ないだろ。
と、そのとき別の先生の声が聞こえた。
「…工藤先生!!お電話です!」
「あ、はい!今行きます!!…じゃ、また後でね。」
笑って手を振って学校に入っていく先生は
子供のように無邪気な顔だった。