大江戸妖怪物語
僕と雪華は顔を見合わせる。雪華は強い眼差しで僕を見つめていた。
『なにかが起こった』それは誰にでもわかった。
僕はすぐに振り返り、悲鳴が聞こえたところに向かう。
そこには、さっき晴朗の母親に『最期のお別れを言いたい』と言った女子が口に手をあて、震えていた。
顔は青ざめ、唇は紫色。
柩を見て、眼球は見開かれ、なぜか涙を流している。
その涙は悲しいから流しているというわけではなく、涙腺から自然と流れているようだった。
その表情は、恐怖に汚染されていた。ガクガクと膝が震えている。そして意識を失ったのか、倒れ込んだ。
僕は慌てて柩に駆け寄った。そして中を覗く。
神門「!」
僕は一歩後退りした。
続いて雪華も中を覗いた。
雪華は一瞬目を見開いたが、すぐにいつもの表情に戻った。
雪華「・・・これは」
男「嘘だろ?」
女「いやッ、いやぁぁぁぁッ!!」
周りの晴朗の友人も青ざめて震えていた。あたりに黒い空気が渦巻く。そして狂気の叫び声。彼を見た人は揃って家から転げるように逃げていった。
なぜなら晴朗の死体は・・・・・・
・・・・・・目玉が無かった。