大江戸妖怪物語
「早く沸かせ。火力が足らぬ」
「これでも真面目にやってんだっつーの!!」
僕が怒ると火力が上がった。
「お、いいぞいいぞ」
「・・・・・・」
そして急須の中に茶葉を入れ、お湯を入れた。湯呑に入れ、コクリ、と一口飲んだ。
「あー・・・話を戻すがー・・・私自身、今回のことは、何らかの外部の手が加わったと考えている。
「・・・外部の手?」
「まあ、高熱が出た・・・というところは外部の仕業なのかそうでないのかは、いまのところわからない。だが、自分では目玉はくりぬけない。潰すのは簡単だがな」
そういって雪華はピースサインをした。そのピースサイン・・・絶対『ピース』という意味ではないことは確かだ。目玉つぶしサインなのか、それ・・・。
「しかし潰した痕跡もなければ、周りに落ちていたわけでもない。これは誰かが目玉を持っているということになる。そんな物好きに、心当たりはないか?」
僕は少しの間沈思黙考した。存外、心当たりがない。第一、そんな奴がいたらすでに御用になっている頃だろう。そして街中引きづられて死ぬと思う。
「まあ、晴朗に恨みがあったとか、逆に好きだったとか。あとは・・・狂った嗜好の持ち主とか」
「思い当たる人って・・・いるか?」
僕はまた考え込む。
「恨みを持つ人・・・」
「いるのか?」
「・・・んまあ、軽く持ってる人はいるかも」
すると雪華は卓袱台を倒しそうな勢いで僕に迫ってきた。
「一体それは誰だ?さっさと言え」
雪華の顔は、僕の顔に近かった。お互いの呼吸が確認しあえる。
「何をボォーッとしておる。早う言え」
雪華は多少イライラしながら言ってきた。
「あ、ええ・・・と、・・・」
僕は自分を指指した。
「貴様・・・私を馬鹿にしてるのか?」
雪華の体からは邪悪なオーラが出ていた。
「ああ・・・!えっと・・・。まぁ・・・。僕は個人的にあいつのことが嫌いだった。だから、ちょっとだけ恨んでいる」
「そうか、なら、今すぐ警察を呼んでくる。お前が犯人だと伝えてくる」
「いや、ちょっと、タンマタンマ!僕じゃない!!」
慌てて雪華を引き留めた。
「確かにちょっとは恨んでたけど、目玉集めとかそういう狂った嗜好持ってないし!」
「そうか」
雪華は座り直し、湯呑から茶を一口啜った。