大江戸妖怪物語
「まったくわからぬわ。もう私は疲れた。寝る」
雪華はスッと立って、二階へ向かった。
僕も数分後に自分の寝室へ向かった。
・・・・・・
翌朝。葬式。
僕と雪華は葬式が執り行われるところに着いた。
「なぁ、神門よ」
雪華は葬式場の様子を見ながら言った。
「人は・・・・・・酷いな」
葬式場には、晴朗の友達は誰一人いなかった。
葬式が始まる。
出席者を見ると、僕たちと、晴朗の近親者のみしかいなかった。
その近親者でさえ、おそらくあの晴朗の姿を見たのだろう、柩に花も入れず、終わったとたん転がるように出て行った。
式が終わり、僕たちは晴朗の母親の元へ向かった。
「・・・あら、神門くん」
晴朗の母親は僕を見て、呟いた。言葉には力がこもっておらず、泣きはらした眼元が赤く腫れていた。
「晴朗の友達・・・全然来なかったわね。フフ・・・」
晴朗の母親は顔を引き攣らせて笑った。それが痛々しく思えた。
「やっぱり、見せないほうがよかったのかしら。皆、きっと・・・怯えて・・・」
すると晴朗の母親は頭を下げてきた。
「ごめんなさい。過去に晴朗がしたこと、それと・・・私たちも便乗してあなたに酷いことをしてしまった。でも・・・心が一番廃れていなかったのはあなただったわ。本当に、あの時はごめんなさい」
涙を流しながらの謝罪だった。
「あなたは・・・人間として、一番立派だったのね」
雪華は多少、“一番立派”の言葉に首を傾げた。そして訝しい表情を浮かべ、僕を見つめる。
『こいつが一番立派ぁ??この人、見る目無いわね』
という感情がなぜか伝わってきた。