大江戸妖怪物語
丑三つ時、目が覚めた。黄色い月が煌々と自己主張をするように、その月光を僕の顔の降り注がせる。
ボォーッとしながら窓の外を見る。すると川に、誰かの人影があった。
こんな時間に誰だ・・・?
僕がその姿を見ることは容易だった。
神門「!!」
ストレートの銀髪。
まさに、あの娘だった。
慌てて階段を駆け下り、川へ向かう。
そこに、いた。
あの娘。
僕に背を向け、別に何をするという様子も見せずに月を見ていた。
足は水に浸かっている。春といえど、夜の水温はかなり低いはずだ。
銀髪娘「・・・何者だ」
その娘は呟いた。
高いわけでもなく、低いわけでもない、中くらいの声。
逆にそれが、娘に似合っていた。
白い生地の着物には一輪の大きな花が描かれていた。そして金色がスプレーされたようになっている。
夜に遠くから見ると白装束にしか見えないが。
銀髪娘「何者だと聞いている」
語彙が強くなった。
神門「僕は、すぐそこの家に住んでいる者で・・・」
銀髪娘「何しにここへ来た」
神門「窓から君の姿を見たから」
銀髪娘「何故来た」
神門「君にお礼を言いたくて」
火事を止めたお礼。
神門「君はあの大火事を止めた。すごかった。消防団でさえ手こずるあの大火事を、君は一人で止めた。すごいなぁ、どうやってあんなことしたの?」
娘はそんな僕の言葉を黙って聞いていた。
僕が話し終えるとゆっくりと振り向いた。