大江戸妖怪物語
「た―――――まや――――――――――ぁ―――――――ッッッッ!!!!!!」
空に向かい僕は大声を発する。
金色の花火がたくさん夜空に浮かんでいる。金の火の滝はまるで地面にいる僕らに降りかかってくるような・・・。
そして花火は徐々に小さくなり、消えた。
一瞬の沈黙。静寂。そして観衆から拍手が上がった。
「来年も期待してるぞ!」
「パパ、来年も来ようね!」
そんな声があたり一面から聞こえてくる。そして花火が終わると河川敷から人はどんどんいなくなり、まだ祭りをしている江戸の町へと戻っていった。
「くぅ~~~~!!」
「・・・神門は何を泣いているのだ」
僕は袖で涙を拭う。
「だって・・・だって、眸が爆弾仕掛けて、ここにいる人が不幸になってたかもしれないのに・・・。僕らの手でこうやって守れたのは・・・やっぱり嬉しくて・・・」
「泣いているところ悪いが・・・」
雪華は僕を指差す。
「お前・・・あまり活躍してないぞ」
「それを言わないでよ雪華ァァァァ!!!」
「本当のことだろうが」
「本当でも言っていいことと言っちゃいけないことがありますぅ!!」
「じゃあ表現を変えよう。神門くんは女性に誑かされながらも必死に戦いました。と」
「それは嫌だね!なんだろう、僕が馬鹿って誇張されてる気がする!」
「それを狙った」
「狙うな!!」
「まったく五月蝿いな・・・。ッ・・・。神門、ちょっと黙れ」
雪華は下を指差す。僕も下を見る。そこには木の下でカップルが話していた。
「あの・・・眸ちゃん!」
その言葉に僕はびっくりした。ひ、ひとみ・・・?
「なあに?由人くん?」
ああ、よかった。同名だっただけのようだ。
「あの・・・これ・・・。決めてたんだ、今日言おうって」
「え・・・?」
「あの・・・僕と結婚してください!!」
(きたああああああああああああああああああああ!!!!!)
雪華は無表情で行く末を見ている。反対に僕は顔から汗が出るわ手汗すごいわ足がガタガタ震えるわでパニック状態。
「・・・喜んで!」
眸という女性はニコリと微笑んだ。
「眸・・・!」
「由人・・・!!」
カップルは熱く抱擁した。
「ずっと・・・一緒にいてくれるよね?」
「もちろん・・・ッ!もちろん由人となら・・・ずっと・・・一緒に・・・!」
「泣くなよ・・・」
「泣いてないもん!」
「ほら・・・泣いてる」
「!*;+✿♥♫☆彡?@?!?!?!?!?!?!」
由人という男は眸の涙に口付けた。
僕がパニックになり木から落ちかけたところを、雪華がなんとか助けてくれた。
「じゃあ・・・夫婦となる今・・・することはただ一つだよね」
「由人・・・うん。いいよ」
(何するのかな)
僕は下をマジマジと見つめる。
すると由人と眸の唇が重なった。
「ファッ・・・」
僕は素っ頓狂な声を出す。しかしアツアツな二人は気づいていないようで。
「ん・・・由人・・・苦し・・・」
「・・・大丈夫・・・だから」
(どこがどこがどこがどこが・・・大丈夫なんですかオイィィィ!!!!)
な・・・なんかディープですよ。ディープですよおおおおお?!?!?!
「・・・ッ・・・痛いよ」
(痛い?!?!?!)
「・・・大丈夫だから」
(さっきからなんだよ由人ォォ!!大丈夫だから、しか言ってねえじゃねえかァァァ!!お前の大丈夫が一番心配なんだよおお!!!)
「・・・神門、・・・離れようか」
空気を読んだ雪華が僕の裾を引っ張る。
僕は一目散にその木から距離をとった。まあアツアツな二人はそれでも気づいていないようで!