大江戸妖怪物語
「神門・・・すごい汗・・・尋常じゃない量の汗が流れてるぞ」
雪華が引き気味に僕に言う。やめて引かないで。お願い。
「いや・・・だってもう・・・あんな・・・うばー!!!」
動揺のあまりわけわからん声を出してしまった。周りの人が変な目を僕に向ける。
「まったくお前というやつは・・・」
ため息混じりに雪華は言う。僕は未だに汗が引かない。
「ご、ごめん・・・・・・」
僕たちは家へと向かう。人ごみを通り抜けながら。
「・・・おい、雪華」
後ろから声をかけられて、僕らは振り向く。そこには不動岡さんが立っていた。
「あら、仕事は終了?」
「ああ、どっかの誰かさんが事を片付けてくれたからな」
(眸のことか・・・)
「ええ、ちゃんと倒しといたわ。あ、これ砂時計ね」
雪華は袖からひとつの砂時計を取り出す。それは眸の砂時計。
「取り込むのもめんどくさいわね。持っていてくれない?」
不動岡さんに砂時計を渡す雪華。不動岡さんはそれを受け取り、胸ポケットに入れた。
「まあ、どうせ彼女は地獄行きだろうけど・・・おそらく裁判することになると思うから、そこんとこよろしく」
「よろしくって・・・俺だって暇じゃないんだがな・・・」
腕組みしながら不動岡さんは話す。
「いいじゃないの。それがあなたの仕事でしょ???」
「うッ・・・。まあしょうがないか」
不動岡さんは諦めたように言う。そして何かを思い出したように不動岡さんは手紙を出した。
「あ、そうそう。あの方から手紙を預かっているんだが。雪華に渡せって」
「あの方・・・。・・・ッッ!!」
雪華の顔面に稲妻が走ったような表情が浮かぶ。
「雪華・・・誰から?」
「え、閻魔王様・・・!」
「まあ恐らく、内容もそういう内容だから・・・。ここで見るのはやめておいたほうがいいと思うが」
「そうだな・・・。家に帰ってじっくり見るとしよう」
「・・・てか、不動岡さんって何者ですか・・・?冥界の方との接点持ってるって・・・」
「・・・というわけだから、あとでその内容を確認しておいてくれ。俺は署に戻って書類の整理があるんだ」
「僕の質問スルーですか?!」
「じゃ、夜も遅いから。じゃあな」
不動岡さんは手錠をクルクル回しながら夜道を一人、歩いて行った。