大江戸妖怪物語
部屋の中には風呂敷が置かれていた。雪華はそれを持ち、部屋を後にする。
「少し、礼を閻魔王様に申してくる。神門は来るか・・・?」
「いや、僕はいいです。そとで待ってるよ」
また長い廊下を進んで行く。すると巨大な階段が現れた。その先には今まで見たよりもさらに巨大な扉。
(すべて桁違いだな)
「では、行ってくる。ここで待っていろ」
そういうと雪華はドアを叩き、
「閻魔王様。雪華です。入ります」
扉の中へと消えてった。
僕は階段の一番上の段に座り、時間を潰す。
「まだかなー雪華」
五分くらいしたが、雪華は戻ってこない。話が弾んでいるのか。
後ろを見ると大きな扉。
(ちょっと覗いてもいいよね?)
立ち上がり、扉の取っ手の金属部分を握る。少しだけ開けてみる。ギィギィ音がする。少しだけ遠くをみると、雪華が跪いていた。その奥にいるのは、もしかして・・・
「君、だあれ?」
後ろから声をかけられ、僕はビクッとした。
「いやいや、僕は怪しいものでは・・・ッ?!」
首に当たる冷たい金属。そこにいたのは、微笑みながら僕の首に刀を突き立てる男。爽やかな笑顔が、逆に怖い。
「こっから先の部屋は閻魔の部屋だよ。不法侵入かな?それとも閻魔の首でも狙ってた?」
爽やかな笑顔の裏に見え隠れする狂気の顔。
でも、この人、『閻魔』って呼び捨てにしている。もしかして、閻魔王の側近とかそういうレベルの人なのかな?
長い髪を後ろにアップにして、ポニーテールのように垂らした髪の毛。
頭の上には薬壺を模した様なものが乗っている。
にっこりと笑うその顔・・・怖い!そして漢の官人のような服を着ている。
「あーあ。なんで今日に限って十二神将がいないんだろ。彼らがいたら、僕が直々こういうことしなくて済むのにな。ほんとなんで今日に限って出張なんだろー?」
「じゅ、十二神将・・・?」
「あれ、君知らないの?もしかして君、死んで間もない?」
「死んで間もない・・・ていうか・・・」
死んでないです。
「十二神将は僕の部下だよ。とっても強いんだ。十二神将がいれば君の首はポーンなのにね」
笑顔でダークなことをさらっというこの男。