大江戸妖怪物語
僕は餅を一口パクリと食べる。
デリシャスー!
小豆「それで、銀髪娘さんというのは?」
これは言っていいことなのか?言ったら銀髪娘に呪いをかけられそうで怖い。
氷漬けの呪いとか?うぅ・・・いやだ。
あまり肝心なことは話さないで、手短にまとめよう。それが無難だ。きっと無難だ。
神門「実は丑三つ時に川で出会って」
小豆「・・・それで?」
神門「・・・それだけ」
・・・
よし、手短にまとめたぞ。ドヤ。
するとアズ姐は両腕を腰に当てて、眉毛を八の字にし、ため息をついた。
小豆「それだけで人間を疑っちゃダメよ。その人がいい人だったら、神門くんは酷い人よ」
そうなんだよ。手短に話すと、僕の気持ちを解って貰えないんだよぉぉぉぉぉ!!
僕が“殺されかけた”って言ったら、皆解ってくれるだろうけどさ・・・。
神門「ごめんなさい、アズ姐。僕が悪かったです・・・」
僕は項垂れてシュンとした。
小豆「あ、・・・そんなに項垂れないで!ちょっと言い過ぎちゃったわ」
アズ姐は顔の前で両手を合わせ、ごめんね、と繰り返す。
僕はアズ姐と謝り合戦を繰り返した。
僕はお汁粉を食べ終わった。
そしてアズ姐は店を終いはじめた。
神門「え、店、終わりにしちゃうの?」
小豆「別にいいわよ、ちょっとぐらい。神門くんとお話ししたいんだもの」
男というのは単純な生き物です。こういうこと言われると、心グラつきます。
店の扉を閉めるときに、風が吹き、それがアズ姐の藍色の髪を揺らす。しなやかな柳のような髪は風が止んだと同時に、元に戻った。
それは川の向こう岸の銀髪の娘の髪をも揺らしていた。
僕はアズ姐と一緒に店の奥に入ろうとした。
・・・ちょっと、待てよ。
川の向こうの銀髪の娘・・・。さきほど僕の視界に入った。嫌な予感だ。
僕はゆっくりと振り返る。
川の向こう岸にいる銀髪の娘は左手の親指だけを立たせた状態の手の形で、親指を下に向けていた。
僕、嫌われてるのか・・・?