大江戸妖怪物語
神門「その常連さんは優しかったかもしれない。でも、その優しさに嫉妬をしてしまう人もいるんだ」
小豆「そんな人・・・人間じゃないわ。第一、人は他人を恨んじゃいけないのよ」
アズ姐は首をフルフルと横に動かした。
神門「でもさっき、アズ姐は犯人のことが許せないって言っていた。人間、どこかに恨みを持っているんだよ。小さーい恨みがある」
小豆「神門くん・・・」
そういうとアズ姐は僕に抱きついてきた。僕の胸ですすり泣いている。
小豆「今だけ・・・神門くんの胸・・・ないていいかな?」
僕は必死に、頑張って、下心を捨て去ろうとした。
心の中では返事はもちろん゛いいとも!”だったけど、それを顔に出さないように一生懸命演技した。
小豆「うあ、ごめん!神門くん!」
アズ姐が僕の胸から離れたのは、1時間後くらいだった。
その間水も飲めず、僕の口内はカラカラだった。
小豆「ごめんね!帰りたいよね!」
神門「申し訳ありませんが、帰らせてもらいま~す・・・。ついでにお水を5杯プリーズです・・・」
僕は8杯(結局5杯じゃ足りず、3杯プラスして飲んだ)の水を平らげ、店の扉を開けた。
?「人間、どこかに恨みを持っている・・・かぁ。マセた言葉を使うのね」
僕は扉の横の雨戸に寄りかかっている人に目を向けた。この声、特徴あるぞ。
神門「おっ・・・お前はッ・・・!!」
僕の目の前にいたのは、銀髪娘。
銀髪娘「最近のガキは調子ぶっこいてるって聞いたけれど。こう、堂々と見せつけられちゃうと逆にドン引きだわ」
神門「いったいお前は何でその話を知っている・・・?盗聴か!?盗聴器をしたのか!?」
名前もわからぬ娘に、僕はツッコミを入れる。
銀髪娘「ところで、さっき私の話をしようとしていたでしょう」
冷たい汗が僕の背中をツーッと滑り落ちる。
銀髪娘「言ったらコレよ」
娘は刀の柄を持ち、僕を軽く脅迫した。軽く・・・ではないな。本気で脅迫した。
神門「い・・・言わないよ!言うわけないだろ!」
銀髪娘「ならいいけど」
娘はツンとした態度で、路地裏へと入る。僕も慌てて追いかけるが、入り組んだ路地のせいで、すぐに見失ってしまった。
神門「名前聞くの、忘れちまった」