大江戸妖怪物語

「こういう風に盛り上がるのもいいものだな」

「それを何故笑顔で言わないのかな雪華は」

相変わらずの無表情で酒を飲む雪華。

「かわいそうになお前は。こんなにうまい酒が飲めないとは」

「飲んだら意識飛ぶから」

そこに札埜がやってきた。

「雪華はなにを飲んでいるのかしら」

「私は泡盛よ」

「いいわね。アタシは極上日本酒よ」

「そっち飲ませてくれない?」

「構わないわ」

雪華と札埜は打ち解けている様子だった。出会って間もない雪華と札埜が仲良くしているのをみていると、少し胸がモヤモヤした。

楽しい宴は夜中、永遠と続いていたのであった。









―――――――

そして別れの朝。

僕たちを送り出すために、村の人全員が来てくれた。

「神門、時間はかかるかもしれねえが、俺は江戸に行くからな。待っててくれよ」

源一さんは満面の笑みで僕の肩に手を置いた。

「アタシも一緒に江戸に行きたいわ」

札埜も微笑む。

「うん、待ってる。僕は、刃派っていう店をやってるから、江戸に来たら訪ねてきてよ。それなりに有名な店だから」

「そろそろ行くぞ。お前と野宿をするのは勘弁だからな」

そして雪華と僕は村を出た。

「神門お兄ちゃん、雪華お姉ちゃん、ありがとー!!!」

「またきてくれよなー!!」

たくさんの歓声に背中を押されながら、僕らは村を後にした。



「楽しかったね、雪華」

「ああ、また来たいものだな」

僕らはそういうと、帰路を進んでいったのであった。



< 227 / 328 >

この作品をシェア

pagetop