大江戸妖怪物語
「こういう風に盛り上がるのもいいものだな」
「それを何故笑顔で言わないのかな雪華は」
相変わらずの無表情で酒を飲む雪華。
「かわいそうになお前は。こんなにうまい酒が飲めないとは」
「飲んだら意識飛ぶから」
そこに札埜がやってきた。
「雪華はなにを飲んでいるのかしら」
「私は泡盛よ」
「いいわね。アタシは極上日本酒よ」
「そっち飲ませてくれない?」
「構わないわ」
雪華と札埜は打ち解けている様子だった。出会って間もない雪華と札埜が仲良くしているのをみていると、少し胸がモヤモヤした。
楽しい宴は夜中、永遠と続いていたのであった。
―――――――
そして別れの朝。
僕たちを送り出すために、村の人全員が来てくれた。
「神門、時間はかかるかもしれねえが、俺は江戸に行くからな。待っててくれよ」
源一さんは満面の笑みで僕の肩に手を置いた。
「アタシも一緒に江戸に行きたいわ」
札埜も微笑む。
「うん、待ってる。僕は、刃派っていう店をやってるから、江戸に来たら訪ねてきてよ。それなりに有名な店だから」
「そろそろ行くぞ。お前と野宿をするのは勘弁だからな」
そして雪華と僕は村を出た。
「神門お兄ちゃん、雪華お姉ちゃん、ありがとー!!!」
「またきてくれよなー!!」
たくさんの歓声に背中を押されながら、僕らは村を後にした。
「楽しかったね、雪華」
「ああ、また来たいものだな」
僕らはそういうと、帰路を進んでいったのであった。