大江戸妖怪物語
木と竹が生い茂る山の中、僕はひたすら集落を探した。
しかし、村に足を踏み入れて少ししたところだった。
?「助けてください!!」
女性の声がしたかと思うと、思い切り肩を引かれた。僕はそのまますっころんだ。
見上げると、黒髪の女性が泣き顔で立っていた。
?「じ、実は追われているんです!追手がすぐそこまで・・・お願い、助けて!」
僕の袖を掴んでくる女性。すると後ろのほうから数人の足音が聞こえてきた。3人くらいか。
?「あの女はどこに行ったのですか?!」
?「見失いましたぜ!!」
?「早く探すのです!!!」
怒声が聞こえてくる。そしてそれはどんどんこちらに近づいてきていた。
神門「ど、どうしよう・・・!!」
僕は雪華の顔を見た。周りに隠れられる場所はない。
雪華「上だ。木の上に隠れよう」
?「わ、私、そんなに登れないです!!」
雪華「大丈夫だ。神門、彼女をよろしく頼む」
神門「了解!」
彼女を肩に担ぎ、僕は思いっきり飛び上がった。やはり、人一人を担いでいるため、思った以上に飛べない。なんとか右手で杉の木の枝を掴んで、上がることができた。
?「くそっ・・・みつからねえですぜ、兄者」
?「うるさい!お前らがさっさと見つければよいのです!!」
どうやら三人らしい。しかし、奴らは木の上までは見ないらしく、そのまま僕らの下を通り過ぎて行った。
女性は息を切らしながら木の幹に凭れ掛かった。すると女性はケホッケホッと咳をした。そして、息苦しそうに呼吸をする。
神門「ちょっと、大丈夫?!」
?「す、すみません・・・。私、喘息を患ってて・・・。く、薬は・・・ゲホッ・・・家にあるんですけど、ここから遠くて・・・・・・」
雪華「家の位置は言えるか?」
?「は、はい・・・ゲホッゲホッ。ここから少しいった所に水車小屋があるんです。そこに住んでます」
雪華「わかった。急ごう、悪化するといけない」
?「でも・・・ここから歩くと一時間はかかるかと・・・」
雪華「大丈夫。すぐつく」
僕はまた彼女を持ち上げると、そのまま俊足を使い、走った。
?「え?!えええええええええええええええ?!?!」
神門「この調子だとすぐにつく。もう少し耐えてもらっていいかな」
僕は彼女の顔を覗き込んで言った。顔色は未だに悪い。
彼女と目があい、すると彼女は目を大きく見開いて頬を染めた。
(・・・?)
少しばかり血行が良くなったのかと思い、一安心した。
そしてすぐに水車小屋についた。少し苔が生している水車がカタコトと音を鳴らしながら回転している。彼女は小屋の中に入り、どうやら薬を飲んだらしい。咳が落ち着いてきて、彼女は僕らに頭を下げた。