大江戸妖怪物語
木南「私、ここでお米を脱穀する仕事をしてるんです。それで、今日は山の近くにある集落にお米を届けた帰りだったんです」
水車小屋の中を覗くと、水車の回転により、中にある杵が臼の中にある米をついていた。そして、その胸にキラリと光るものが見えた。丸い紅玉に金色の金属で縁取られた物体・・・。
木南はその視線に気づいたのか、その胸飾りを取って、僕たちに見せた。
木南「これは、私の家に代々伝わる石なんです」
紅玉は太陽の光に照らされ、美しく煌めいていた。
雪華「これをあいつらは狙っていたんじゃないのか?」
雪華は眉間に皺を寄せてその石を凝視した。
確かに売ればお金になりそうだ。しかも、結構高額で売れると思う。
木南「うーん・・・。そうなのかしら・・・」
その石を再度胸に着け直した。
木南「まあ、よくわからないですが・・・。でも、本当にありがとうございました!ところで、お二人はどうしてここにいらしたのですか?」
神門「あー・・・そのことなんだけど・・・」
僕が話し始めようとすると、木南は僕の手を握ってまじまじと目を見てきた。
木南「せっかくなので、中に入ってお話ししましょう!外じゃ寒いですから」
神門「ええッ?!」
僕は木南に強引な形で水車小屋の中に引っ張られた。雪華もそれに続き中に入る。小屋の中には水車の木と木が擦れあう音が響きあっていた。
神門「・・・で、えーっと、僕たちはこの異常気象をどうにかしようと思ってきたんだ」
木南「・・・やっぱり、妖怪が関係してるんですかね」
神門「そうかもしれないし、違うかもしれない。僕らはまだ、ここに来たばかりだからさ。これから調査する予定でいるんだ」
それから、この異常気象の件について話した後、僕たちは小屋を後にしようとした。
木南「ここから少し歩けば民宿があると思いますので。いい露天風呂があるんですよ!」
僕が戸を開けると、猛吹雪が僕を襲った。
神門「どひゃああああああ!!!!!」
僕は間抜けな声を出してすっころんだ。
雪華「アホな声を出すでないわ」
雪華に背中を蹴られ、立たされる。
神門「あの・・・よろしかったらこれ・・・」
雪華「これは?」
木南「・・・蓑です。少しは雪よけになるんじゃないでしょうか」
藁で編まれた服を手渡される。確かに暖かそうだ。しかし、それを着ようとしたものの、うまく着れない。
木南「・・・こう着るんですよ」
木南が僕の首元に手を伸ばした。木南の細い指によって、紐が結ばれた。時々、白い指が首筋に当たり、それが少しゾクッとして、ドキドキした。
神門「あ、ありがとう」
僕はお礼を言うとすぐその場を去った。