大江戸妖怪物語

木南「私、ここでお米を脱穀する仕事をしてるんです。それで、今日は山の近くにある集落にお米を届けた帰りだったんです」

水車小屋の中を覗くと、水車の回転により、中にある杵が臼の中にある米をついていた。そして、その胸にキラリと光るものが見えた。丸い紅玉に金色の金属で縁取られた物体・・・。

木南はその視線に気づいたのか、その胸飾りを取って、僕たちに見せた。

木南「これは、私の家に代々伝わる石なんです」

紅玉は太陽の光に照らされ、美しく煌めいていた。

雪華「これをあいつらは狙っていたんじゃないのか?」

雪華は眉間に皺を寄せてその石を凝視した。
確かに売ればお金になりそうだ。しかも、結構高額で売れると思う。

木南「うーん・・・。そうなのかしら・・・」

その石を再度胸に着け直した。

木南「まあ、よくわからないですが・・・。でも、本当にありがとうございました!ところで、お二人はどうしてここにいらしたのですか?」

神門「あー・・・そのことなんだけど・・・」

僕が話し始めようとすると、木南は僕の手を握ってまじまじと目を見てきた。

木南「せっかくなので、中に入ってお話ししましょう!外じゃ寒いですから」

神門「ええッ?!」

僕は木南に強引な形で水車小屋の中に引っ張られた。雪華もそれに続き中に入る。小屋の中には水車の木と木が擦れあう音が響きあっていた。

神門「・・・で、えーっと、僕たちはこの異常気象をどうにかしようと思ってきたんだ」

木南「・・・やっぱり、妖怪が関係してるんですかね」

神門「そうかもしれないし、違うかもしれない。僕らはまだ、ここに来たばかりだからさ。これから調査する予定でいるんだ」



それから、この異常気象の件について話した後、僕たちは小屋を後にしようとした。

木南「ここから少し歩けば民宿があると思いますので。いい露天風呂があるんですよ!」

僕が戸を開けると、猛吹雪が僕を襲った。

神門「どひゃああああああ!!!!!」

僕は間抜けな声を出してすっころんだ。

雪華「アホな声を出すでないわ」

雪華に背中を蹴られ、立たされる。

神門「あの・・・よろしかったらこれ・・・」

雪華「これは?」

木南「・・・蓑です。少しは雪よけになるんじゃないでしょうか」

藁で編まれた服を手渡される。確かに暖かそうだ。しかし、それを着ようとしたものの、うまく着れない。

木南「・・・こう着るんですよ」

木南が僕の首元に手を伸ばした。木南の細い指によって、紐が結ばれた。時々、白い指が首筋に当たり、それが少しゾクッとして、ドキドキした。

神門「あ、ありがとう」

僕はお礼を言うとすぐその場を去った。



< 232 / 328 >

この作品をシェア

pagetop