大江戸妖怪物語

雪華は部屋に入るなり、壁に耳をつけた。

神門「せ、雪華?!」

雪華「あいつらの情報が分かるかもしれない。この大声なら、聞こえるかもしれぬからな」

やはり隣からは大声の笑い声が聞こえてきた。

?「さすがですぜ、兄者。この村は兄者のものですぜ」

?「兄者ならこの村をまとめる素質がありまっせ」

子分二人が兄者と呼ばれる人物を褒めちぎっている。

?「にょほほほほ!!当たり前です!!私に不可能はないのです!!!」

神門「・・・なんか特徴的な笑い方する奴がいるんだけど・・・」

僕は溜息をついた。

?「ですが、残念なことに!!あなた方二人が!!あの小娘を逃したせいで!!!すべてオジャンですよ!!にょーーーーーー!!!!!」

特徴的な笑い方をする男が立ち上がったようで、ゴトッと音がした。

雀陽「私、甘野雀陽がこの村を救ってあげましょう!!そして江戸、いや、日本全国を私の手で救ってあげるのです!!!!!!にょーーーーーーーーーーほほほほほほほほほほ!!!!!!!」

雪華「なんかあいつ、ぶっ殺したくなってきたな」

雪華は持っていた氷刀に手をかけた。

神門「やばい、やばいって!さすがに!!!」

僕は部屋を飛び出そうとする雪華を必死に止めた。

雀陽「にょほほほ!!!もうすでに一番手は打ってありますよ・・・。巨大な一番手が  
ね・・・!!!!」

?「「さすが兄者!!」」

雀陽「卑怯・・・それこそが正義!!それこそが美徳ぅ!!!!にょほほほほほーん!!!」

雀陽と呼ばれる人は気分を良くしたようで、そのあとの言語は酒に溺れて聞こえることはなかった。
雪華と僕は壁から離れた。

雪華「それにしても・・・巨大な一番手とは何なんだ?なぜ木南を襲った?目的はなんだ?」

神門「それはわからないけど・・・でも、この村の村長になろうとしてるのかな?」

雪華「まぁ・・・、今後とも動向に注意しよう」

雪華はそういうと、近くにあったタオルを取った。

雪華「風呂にでも入るか。長旅で疲れた」

そう言って雪華は立ち上がり、バスタオルを肩に掛けた。

雪華「お前はどうする?」

神門「うーん・・・せっかくだし行くよ。露天風呂だよね?」

雪華「そうだな」

雪華と僕は廊下を歩いた。すると若い女性二人ですれ違った。二人は風呂上りらしく、タオルで顔の水滴を拭っていた。

女性「もしかしてカップルじゃない?」

女性「うっそー!横の彼氏、イケメンじゃない?」

女性「うちら、先にお風呂出てラッキーだったね!だってうちらいたら気まずかったでしょ!」

イケメンと言われて、僕の心は跳ね上がった。しかし、彼氏じゃないが。


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