大江戸妖怪物語
しかし、『うちらがいたら気まずい』とはどういうことなのか。
そして風呂につき、男・女と暖簾で別れていた。
神門「じゃあ僕はこっちね」
男と達筆で書かれた暖簾を潜り、僕は脱衣所に入った。僕は着ていた浴衣を着の籠に入れて、タオルを腰に巻いた。脱衣所には僕以外に人はおらず、また、籠に喪服が入っていなかったため、どうやら風呂は自由に使えそうだった。
神門「さて入るか」
僕はガラガラと戸を引き、外へ出た。白い温泉には蒸気が立ち込め、少し温泉独特の匂いがした。
僕は風呂の外で体をお湯で流してから、風呂の中に入りタオルを取った。まあ、風呂の中でタオルというのはマナー違反ということで、注意書きもあった。白いお湯ということで、局部までは見えないとしても何か後ろめたい気持ちが生まれる。
神門「うあぁ~・・・気持ちいぃー・・・・」
体の底から快感が訪れ、声が出る。その時、気づいた。横に誰かがいることを。
僕がその人物を判別した際に、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。僕は一気に顔が赤くなる。
神門「せ、せせせせせ雪華ァァ?!」
なんと風呂に入っていたのは雪華だった。
雪華も僕に気づいたらしく、目を丸くさせた。
雪華「お前・・・とうとう変態に成り下がったか」
神門「違う違う違う!!僕は風呂に入っただけ・・・!!男の脱衣所から風呂に入っただけです!!」
僕は風呂の横に書いてあるプレートを見た。そこには・・・
神門「こ・・・混浴・・・風呂・・・!!」
混浴風呂。なるほどそういうことだったのか・・・。
おそらく先ほどの女性二人の『気まずい』とは、これを意味していたのかと気づいた。
雪華は髪の毛を後ろに一つ結びにして、その髪をお団子状にしていた。
雪華もタオルを取っていて・・・てことは。
僕の顔面が余計に真っ赤に染まる。
(ダメだ!変なことを考えるな!!ピンクな思考よ消えよ!消え失せよ!!)
僕は顔面を湯に突っ込んだ。しかし興奮しすぎて、鼻に水が入り、ブゲッと咽返った。
雪華「何やってんだ、馬鹿」
雪華に呆れた声で言われた。
湯が白く濁っていてよかった。下手したら・・・うん、何も考えないようにしよう。
雪華の肩は白く澄んでおり、そして鎖骨の下辺りまでお湯に浸かっていた。僕との身長差のせいか、僕はちょうど胸の辺りに湯の位置がある。雪が降っていて寒いため、僕は猫背気味になり、肩まで浸かった。
神門「・・・で、木南のことなんだけどさ」
雪華「彼女のことには口を出さない」
雪華はツンとそっぽを向いた。
神門「でもさっき、あいつらの動向を伺ってたじゃん」
雪華「それは、あいつらが何者かが気になるからだ。別に彼女の為じゃないから」
木南は雪華にとっての地雷なのか?
神門「・・・でも、そんなに怒ることかな?」
雪華「・・・お前は」
雪華は僕に背を向けた。
雪華「・・・お前は彼女のことが好きなのか?」
神門「・・・え?」
雪華の唐突な質問に僕は困惑した。