大江戸妖怪物語
そのけたたましいオーラは、まさに十王と呼ばれるに値するものだった。雪華も似たような雰囲気を醸し出しているが、泰山王さんのほうが一段と上のオーラが強い。
泰山王「思ったよりもアッサリ死んだねー?若干手加減してあげたんだけどなー」
神門(泰山王さんでこのレベルってことは、閻魔王ってどんだけ強いんだよ・・・!!)
傍らで雪華が手首の水晶玉を無残に散らばった死体に翳す。そして四つの砂時計が雪華によって回収された。
雪華「えっと、木南さんは・・・」
木南「・・・はい。飯綱使いです・・・」
木南は斜め下を向いた。そして涙を流し始めた。
木南「ごめ・・・んなさい。私が力不足で・・・」
泰山王さんは木南の前に座り込んで持っていた刃と紅玉を差し出した。
木南「私の家は、もともと飯綱使いの家系だったんです。でも・・・あまりにも力が強すぎて、ずっと隠してきて・・・」
木南の眼から溢れた涙が土の色を部分的に黒く染める。
黄梅「木南・・・・・・」
黄梅が木南の背中を摩る。
泰山王「君は、自分が力不足だと思う?」
泰山王さんが木南の頬に手を添えた。
木南「・・・え・・・?」
泰山王「悪いけど、僕はそうは思えないなー」
泰山王さんはニッコリと笑った。今度は優しい笑みだった。
雪華「・・・・・・」
雪華は腕を組みながら、事を見守っていた。
泰山王「きっとこの刃は君に使えたいと思って出て来たんだよ・・・。ほら」
木南に刃を手渡す。
木南「あ・・・・」
木南は刃を握りしめた。
木南「あたた・・・かい・・・」
泰山王「それには心が籠っている。単純に、ただの刃ではないから。・・・この刃は君のものだ」
木南「私には・・・これを使える権利があるんですか?」
泰山王「少なくとも、君にはあると思うけど?僕が言うんだから大丈夫じゃない?待ち望んでいた主にようやく出会えたんだから・・・刀にだって命もあるし、意志だってある」
木南「わ、私・・・頑張ります!この飯綱の力でもっと平和にしてみせます!!」
泰山王さんは木南の頭を撫でると、僕の方にツカツカと向かってきた。