大江戸妖怪物語
そして所変わり、僕の家の居間。
神門「さっきのは一体・・・、いや、まだ信じられない。これが夢なのではないかと思っている自分がいる」
雪華「さっきのは現実だ。証拠にその太刀がある」
母親は外出からまだ帰ってきていない。
神門「なぁ・・・えっと・・・。詳しいことを教えてくれないか?僕・・・あまり理解できていなくて・・・」
雪華は腕組みをしながら答えた。
雪華「お前は馬鹿だから、理解できるかしら?命の恩人を犯人呼ばわりした人に、理解は到底できないだろうけど」
神門「・・・すみません」
雪華s「・・・まあいいわ。細かく教えてあげるわ」
雪華は話し始めた。
雪華「まずは私自身の紹介だな。私は雪華。さっきも絡新婦に言われたが、正真正銘の雪女だ」
神門「雪女・・・。信じられないな。この世に妖怪がいたなんて」
雪華「元々雪女は東北や飛騨あたりに住む。雪山の中を好むのだ。もちろん、私以外にも雪女と呼ばれる者はいる。私の母や私の祖母も雪女だ。現在、祖母は飛騨の山に住んでいる」
神門「あ、絡新婦が言ってた『東北にいるはずじゃ』っていうのは、雪女が東北か飛騨にいると知っていたからか。でも、飛騨には雪華のおばあさんしか住んでいないから、絡新婦は東北って言ったんだね。そういうことだったのか」
雪華「あぁ。江戸は・・・冬には雪が降るものの、夏は暑い。だから絡新婦にとっては雪女が江戸にいること自体が驚くべきことだった」
だからあんなに動揺したのか。
神門「そんな雪女が、どうして江戸に?」
雪華「私が江戸に来た理由・・・。それは妖怪を退治するためだ」
神門「妖怪退治?なんか桃太郎みたいだな・・・」
なぜ童話を僕は持ち出したのか・・・。
雪華「桃太郎か・・・。その例えはあながち間違ってはいない。・・・桃太郎の話は人間に悪さをする鬼を退治する話だった。その鬼を妖怪に例えればいい」
神門「でも、妖怪が妖怪を退治するって、変な話だよな」
雪華「この世に妖怪は大きく二種類ある。人間に危害を加えるかどうか、だ。私のように人間との共存を望む妖怪もいる。しかし、さっきの絡新婦のように人間に危害を加える妖怪もいるのだ。悪しき妖怪のことを、通称『邪鬼』と呼ぶ。」
雪華はため息を吐いた。
雪華「あるお方が、私に邪鬼退治を命じた。私は邪鬼を倒すため、江戸に来た。江戸は人が集まる。だからこそ、邪鬼も集まる」
神門「あるお方・・・?」