大江戸妖怪物語
雪華「なんか言ったか?」
神門「いえ、雪華は美人だなと言いました」
雪華「・・・私はだいたいあなたと同じくらいよ。私は妖怪の中では異形の存在っぽいけど。ちなみにもう一つ説明しとくけど」
雪華は僕の唇に人差し指をおいた。
雪華「私には苗字がないわ」
神門「・・・はぁ?」
それは聞いていない。
雪華「妖怪はもともと苗字を持たない。今回の佐波釛の場合は、絡新婦自ら付けた名だ。だから、騙されないように気を付けろよ。・・・・・・私以外の妖怪にな」
そういうと雪華は二階の部屋へと向かっていった。
僕は唇に残された体温を感じた。それは雪女らしく、冷たかった。
神門「これからよろしくな、雪華」
自然と漏れた言葉。それは雪華には聞こえないくらいの小さな声だった。