大江戸妖怪物語
神門「あの話を聞く限り、亡くなったのは晴朗。朝見晴朗って人だ。僕と同い年だよ」
雪華「では・・・お葬式に行かなくてはな」
神門「・・・いや、いかない」
雪華「なぜだ?」
神門「・・・・・・行かないものは行かないの」
僕は少し強めの口調で雪華に言った。僕は豆腐をパクリと食べた。
神門「ふう。ごちそうさま」
僕は食べ終わると自室へ戻った。
布団に寝転がり、窓の外を見る。晴朗の家の周りには人だかりができていた。晴朗は僕の周りの人からも人気があった。それゆえ、彼が死んだと聞いて、友人やらが弔問に訪れているのだろう。
神門「・・・なんだってんだよ」
僕は軽く舌打ちをして、窓の外を眺めていた。
さっきも言ったが、僕は晴朗と同い年。晴朗は・・・ここら一帯の江戸の人気者だった。近所の子供も家の手伝いが終わると晴朗の家へ行き、メンコやらコマ回しを楽しんでいた。
・・・僕はそれを眺めているだけだった。
神門「あいつ・・・ほんとに人気だったのにな」
僕は左目を閉じ、瞼を撫でる。
神門「あいつには・・・左目のない人間のきもちがわかるのか?たかが、目がないだけで!左目がないだけで!!あいつなんかに僕の気持ちがわかるものか・・・」
少し情緒不安定気味になってしまった。僕は右手で床をドンと叩いた。
雪華「神門・・・?」
雪華が無表情なまま扉から見つめていた。
神門「あ、雪華・・・その・・・いきなり大声出してごめん」
僕は目を背けながら謝る。
神門「・・・僕はあいつが嫌いだ。あいつだって僕を嫌い・・・いや、気持ち悪いと思ってる。だから僕は通夜には行きたくないんだ」
雪華「だがな・・・」
雪華が階段の方を指差す。
母「神門ー?今日通夜行くから、準備しときなさいよー!!」
・・・・・・
僕は溜息をついた。
神門「いろいろ、最悪だ」