大江戸妖怪物語
――
木魚のポクポク・・・・という音が、やたら寂しい音色だった。
晴朗は南無阿弥陀仏の念仏の中、眠っていた。
そして、通夜は終わろうとしていた。
男「晴朗のお母さん、俺達に晴朗の顔を見せてくれ。最期に、あいつの顔がみたいんだ」
晴朗の友達、数人が晴朗の母親に言った。
女「お願い!晴朗くんにお別れを言いたいの・・・」
別の女子が言う。
晴朗の母「いや、あの・・・見せてもいいのかしら」
晴朗の母親は右手の手の平を頬にあて、悩みだした。視線を俯かせ目を左右に揺らす。
女「お願いします。さよならって、言いたいんです」
晴朗の母親「・・・え、でも・・・」
晴朗の母親は見せたくないようだった。
しかし、友人たちの必死の懇願に負けたのか晴朗の母親は俯きながら、こう言った。
晴朗の母「私自身、・・・見せていいのかよくないのか、わかりません。・・・最期の別れを言いたいのなら、・・・私は止めません」
・・・止めません?
なんか、妙な言い回しだ。
そう言うと、晴朗の母親は晴朗の柩へと向かった。
僕は適当に焼香し、棺を見た。
僕は家を出ようと、晴朗の母親に背を向けた。
雪華「神門は・・・見ないのか?」
神門「・・・もちろん。見るわけないだろ・・・」
僕と雪華は玄関まで来た。
・・・その時だった。
女「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
背後から聞こえたのは、紛れも無く叫び声だった。
僕は悪寒に襲われた。