君との時間は・・・
「笑美・・・不安になったら俺を頼れ?」


「うん・・・」


「怖かったら、俺に泣きついても良いから・・・。俺が受け止めるから。」


「う・・・うんっ。」


こんなことしか言われへん俺は・・・情けないな。


受け止める、て・・・何をやねん。笑美の不安を全部俺が受け止められるわけないやん。


きっと・・・二人とも壊れてまう。それから、俺は自分が何もできへんことを恨むようになる。


そして・・・やっぱり、俺は・・・。


笑美が涙を流し始める。その笑美の顔を見てまた思い出す・・・。綾のことを・・・。


また俺は繰り返してまうんか?大切な人ひとり、護られへんのか・・・。そう思うと俺の体が動き出す。


笑美を・・・そっとやけど、壊れんばかりに抱きしめた。誰にもやりたくない。離したくない。離れたくない。


その一心で、笑美を強く抱きしめた。


「笑美は一人やないんやから・・・。」


どんな言葉をかけたらえぇのかわからへん。どないしたらえぇのかもわからへん。


そのとき、俺の目にあるものが飛び込んできた。それは・・・俺のケータイ。


ついこないだ、笑美とのデートで買ったクマのキーホルダー。


そのとき、俺が思い出したこと。あの日、姉貴に言われたこと。


『昔のこと・・・気にしすぎてない?』


『幸せになりなよ。』


あぁ・・・。姉貴・・・俺、礼言うた方がえぇかもな。今姉貴の言葉とこのクマに助けられたような気ぃする。


綾のことは、昔のこととして思い出にしまっとかなあかん。忘れることができへんとしても。


それから・・・俺は幸せになりたい。笑美を幸せにしたい。クマさん、今回は・・・頼んでもえぇか?


俺には少し難しそうやねん。よろしゅぅな・・・。
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