君との時間は・・・
病室に入ると、笑美の家族が俺に視線を置いた。笑美、言うてないんやろか。


内緒やったんかもしれへん。それやったら、あんまりなれなれしくしとったらバレてまうかもしれへんな。大丈夫やろか。


「恵、私頑張ってくるね。」


「おう。俺はここでちゃんと待ってるから。」


「私が起きたとき、隣にいてくれる?」


「わかった。絶対隣におるから。行っておいで、笑美。」


あかん。絶対笑美の家族に俺がどんな存在かばれたって。けど、笑美はそんなん気にしてへんようで。


「・・・行ってきます、恵。」


そう言って、手術室へ運ばれて行った。笑美の家族もついて行ってもうた。病室を出るとき、弟?さんだけは俺に頭を下げて行った。


俺も、病室を出ようと思ったとき、ふいにあの花瓶が目に入った。


そのとき、俺の頭ん中にちょっとした考えが浮かんだ。


俺は病院を少しの間抜けて、ある場所に向かった。そこは・・・


「いらっしゃいませ。どんなお花をお探しですか?」


「あ・・・えっと・・・」


そう。人生初、花屋に来た。あの花瓶と、笑美に合う可愛らしい花はないか探しに来た。


店内をクルッと見渡すと、ピンクの花が目に止まった。その時、この花やったらきっと・・・。


そう思って、店員さんに「あのピンク色の花がいいんですが。」と言った。


すると店員さんは「あ、わかりました。少々お待ちください。」と言って店の奥に行ってもうた。


しばらくして出てきた店員さんは俺を見つけて笑顔で言うた。


「このお花、彼女さんに差し上げるんですか?」


「え・・・まぁ。はい。」


「元気な女性の方ですか?」
< 119 / 153 >

この作品をシェア

pagetop