君との時間は・・・
つい、低めの声で言うてもぉた。笑美の顔が一瞬ひきつったような気がした。


「ホントだよ!?彼氏なんかいないよ・・・。」


けど、一生懸命主張してくる笑美を見て・・・笑美が嘘言う訳ないって思った。


落ち付け、俺・・・。笑美は、中学から遠いところに引っ越してきたんや。


それやのに、彼氏いてるのはおかしいやん。友達ができただけで、あんなに喜んでたんやし。


「・・・そっか。そぉやわな。」


すると、笑美の顔がすこし緊張が解けたように柔らかい表情になったような気がした。


でも次の瞬間、また俺の中で何かが動いた・・・。


「でも、弟さんと手繋いで歩いたりするんだね。可愛い弟さんだね。何年?」


・・・。確かに言われてみたらそうや。おかしいやん。まだ5歳とか6歳なら分かるで。


けど・・・笑美の口から出てきた言葉は・・・


「中3なの。受験生だよ?」


中・・・3?なんなん、それ、思いっきりおかしいやん。普通、中3言うたら反抗期とかやん。


姉貴とか親て言うたら、うざいとか言う年頃なんちゃうか?・・・なんやねん。


「今大変な時なんだね。僕らもほんの少し前のことなのになんだか懐かしいよね。」


懐かしい・・・?そんなんどうでもえぇねん。それよりなにより・・・


「ホンマ・・・羨ましいな・・・。」


「え?」


羨ましいだけや。そんな彼氏みたいな弟が。ホンマはホンマに彼氏やったりしてな。


弟が彼氏とか、そんな禁忌誰も許さへんやろな。・・・俺あかんわ。こんなん無理や・・・。


―キーンコーンカーン―


「あ、昼休み終わっちゃうね。そろそろ僕らも教室に戻ろうよ。」
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