君との時間は・・・
なぁ、春登。なぁ、笑美?俺は・・・どぉしたらえぇ?


『試合終了です。勝ち残ったのは』


アナウンスが流れ始める。歓声が一気に引いた。そして、聞こえてきたアナウンス。


『1年6組、香々見春登』


一瞬空気が固まった。けど、次に瞬間には大歓声。そうや、俺、負けたんや。


おかしいやんな。俺、春登に体制崩れたとき帽子取られてん。けど、それを自分で取ってもうた。


アホや・・・アホや、アホやっ!!


そう思いながら、俺は・・・自分の視界が揺れることに気が付いた。俺・・・かっこ悪いな。


泣いてるやん。笑美の前でえぇかっこしよう思ってたのに、逆にかっこ悪いとこ見せてるやん。


やっぱり、俺はあかんわ。勝つこともできへん、かっこえぇとこもない。アホや・・・バカや。


ふと、春登の方を見ると笑美の方を向いて笑てた。笑美は、どう思ってるんやろ。



そう思いながら、グラウンドから出た瞬間、体育館の方へ走った。


こんな顔、見られたないし、何より笑美にあわせられる顔があらへんから。


一人で体育館の端にある階段のところまで向かった。そして・・・やっと泣けた。


もう、全部すんだんや、終わったんや。そう思うと涙が止まらへんかった。


その時、聞きたかったはずの声がした。けど、今は・・・会いたくなかった・・・。


「・・・恵?」


「ごめん・・・っ」

多分、今の俺の顔は笑美には見せられへんくらいぐちゃぐちゃやと思うから、顔を上げずに返事をした。


今は、この言葉しか言われへん。けど俺は何を誤ってるんかも、わかってへんかった。


「なんで?恵、握ってたよね?」


「あれは、恵自身の帽子だよ。」


いつの間にか、春登も来てたらしい。・・・そうや。その通りや。
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