君との時間は・・・
「恵が持ってたのは、俺のじゃなくて恵自身のもの。・・・俺が恵のバランスが崩れたとき恵の帽子を取った。でも、俺も驚いたけど恵、俺の手から自分の帽子を取った。」


全部、それが真実や。何も間違うてへん、春登が正しい。けど、笑美は納得してへんのやろな。


笑美が黙り込んでもうた。何を考えてるんやろ・・・。そして、春登があの約束を話す。


「笑美?彼女になってくれる?」


ホンマは俺が言いたかった言葉。けど、俺に言う資格は・・・なくなってももうた。


笑美・・・幸せになってくれたらえぇねんで。こんな俺より、きっと春登なら・・・。


「恵?・・・頑張ったね?」


その時、俺の耳に聞こえてきた言葉。止まらへんかった俺の涙が・・・その言葉を聞いて止まった・・・。


笑美?なんで・・・俺なん?あかんやん・・・そんなん言われたら・・・俺・・・。


「笑美・・・。」


俺は何て言うたらえぇかわからへんかった。けど、今の俺にできることはこれしかできへんと思った。


多分、笑美は嫌うやろな。けど・・・許してもらえたらえぇな。


「なに?」


「・・・行っておいで。」


笑美の表情が・・・晴れることはなかった。それでも俺は、無理やり笑顔を作って『行っておいで』と伝えた。


この『行っておいで』はどんな意味を持ってるんやろ。『借り物競争』のことなんやと思う。


けど・・・『春登のところに行っておいで』って・・・言うてるように聞こえへんこともないやんな・・・。


「笑美?恵の言うとおり。そろそろ行った方がいいよ?」


「・・・はい。」


そして、笑美は走って俺と春登の傍から離れた。そうや・・・それでえぇねん。


春登の言うことを聞いてくれたらえぇ。あぁ・・・俺、何言うてんねやろ。頭おかしいんやろな。


「恵。」
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