君との時間は・・・
そのとき、笑美が立ち止まった。今やと思った。


「笑美ー!」


笑美が俺の方を振り向く。


「何してんねん!頑ばれや!」


笑美の目が・・・俺を映してる?あぁ・・・あの目・・・。俺しか映ってへんのかな?


「笑美さん!ファイト!」


春登がそう叫んだ時、笑美がこっちに走ってきた。このまま笑美は春登の彼女になるんやな。


だから、こっちに走ってくるんだと、自分の中で解釈してた。けど・・・ちゃうかった。


笑美が走ってきた。この場所に。・・・俺の目の前に。


「え、笑美?何してん!?」


「私の借り物は、あなたです!」


一瞬、俺の中で時間が止まった。でも、次の瞬間には時間は動き出してた。


「私の、大切な人。」


俺は・・・笑美と一緒にゴールへと向かった。笑美は俺の手をしっかりと握ってた。


もうすぐゴール・・・。けどそのゴールは・・・借り物競争のゴール?それとも・・・


『ゴール!1人目は1年6組、山本笑美』


アナウンスが流れる。歓声が沸く。そして俺と笑美は・・・一番最初にゴールした。ゴールしたのに・・・まだ手は放されてない。


いや・・・放したない。


「え、み?」


「・・・」


「笑美?俺、負けてるんやで?ここにいるんは俺やなくて、あいつなんちゃうん?」


それでもいまだに信じられへん俺・・・。ホンマに現実なんか・・・。


「違うよ・・・。私は、恵が好きだから。」
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